約 1,207,365 件
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/134.html
「まったく、タルトも困ったもんだよ!」 タルトのヘソ騒動は解決し、家族全員で帰宅した桃園家。 ところが、タルトの体調不良はアイスを全部食べてしまったせいだったことが判明した。 ラブとせつなは二人でアイスを買い直し、せつなの部屋へ。 ラブの部屋はタルトが泣きながら逃げ込んだせいで入れない。 「それじゃあ、アイス、食べようか……」 「え、ええ……」 アイスが楽しみだったのは、ただアイスが食べたかったからだけではない。 「はい、せつな。あーん」 ラブはアイスを容器からスプーンですくい取って、せつなの口元まで移す。 せつなは顔を赤くしながら。それを咥え、飲み込む 「どう? せつな? おいしい?」 「うん。アイスも美味しいけど、ラブが食べさせてくれたから、もっと、美味しい」 「もう照れるなぁ~。じゃあ今度は、せつなの番だね」 今度はスプーンを受け取ったせつなが容器からアイスをすくい、ラブの口元へ移す。 ラブも先程のせつなと同じようにそれを食べる。 「クッハー! せつなのアイスで幸せゲットだよ」 「やっぱり恥ずかしいわ、もう!」 二口だけ食べられたアイスの容器が二人の真ん中に置いてある。 「それじゃあ、もう一回やろっか……」 それからは無言で交互にアイスを食べさせていく二人。 お互いから手渡されるスプーンが徐々に熱を帯びていくのが分かった。 ただ黙々と時間が過ぎていく。 アイスの容器が空になったのは夕方頃だった。 タルト同様、二人揃って仲良く腹痛を起こしたのは言うまでもない。
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/1050.html
「ねえラブ?」 「なに? せつな」 「美希のこと、みきたんって呼ぶの、どして?」 休日の朝、朝食後にラブの部屋で、雑誌を読みながらくつろいでいた私は、ふと疑問に思ったことを口にした。 「あー、それね。いつだったかなー、あたしがふざけてみきたんって呼んだ時に、みきたんの反応が面白くってさー。それから、からかうように使うようになったんだ」 「そうだったの。それで、美希はどんな反応だったの?」 「うん、えーっと、あれ? どんなだったかなあ?」 覚えていないらしい。 からかわれたのだから、美希は怒ったのだろうか。ラブに美希が怒るのは、簡単に想像できた。 「おっかしいな~、面白かったのは覚えてるんだけどな~。ごめんせつな、思い出せないよ~」 「そんな、いいのよ。ただ、謝るなら美希にね」 苦笑しながらそう言った私に、ラブはおどけてカオルちゃんのように笑い返した。 ラブは本当に覚えていないのだろう。ラブが忘れていることを、美希には教えない方が良い気がした。少しばかり美希に同情する。でも、ラブが覚えていないことに、ほっとしてしまった自分は、ひどく嫌な子だ……。 「ねえブッキー」 「なあに? せつなちゃん」 「ラブが美希のこと、みきたんって呼ぶの、いつからか覚えてる?」 休日の午後、わたしの部屋で、せつなちゃんに手編みを教えていたとき、そう質問された。 「それね、覚えてるよ。小学校三年生のときにね、ラブちゃんが美希ちゃんをからかう時に使うようになったのよ」 顔を赤くして焦る美希ちゃんは、かわいかったな。ラブちゃんも癖になったのかな。 「その時の、美希の反応がどんなだったか、覚えてる?」 「え? 美希ちゃんの、反応?」 「ええ、美希の反応」 重ねられた質問に、わたしは少しひっかかるものを感じた。 せつなちゃんが、ラブちゃんではなく、美希ちゃんのことを聞いた。 せつなちゃんの探るような目に、わたしはどう答えるのがいいのか迷った。わたしはせつなちゃんの目を避けて、 「どうだったかしら」 と、思い出すふりをしながら、ごまかし方を考えていた。 せつなちゃんも感付いているのだろう、きっと。美希ちゃんの反応は、あの時も今も、根底にあるものは変わらないはず。試しにわたしが呼んでみた時の、反応の違いに、あの時の幼いわたしでも漠然と気付いたのだ。今、思い返せば余計にわかる、痛いほどに。 わたしが答えることができずにいると、 「面白かった?」 探るような目をわたしに向けたまま、せつなちゃんはそう言った。 「そうね、面白かったような……。あ、ラブちゃんが覚えてるかもしれないわ」 「ラブはね、覚えてなかったわ」 「え? もうラブちゃんに聞いたのね」 「ええ」 答えをラブちゃんに丸投げするという逃げ道はなくなってしまった。 面白がっていたラブちゃんは、あの時も、そして今も、気付いていないのかな。本当に? 「ブッキーも、覚えていないのね」 そういったせつなちゃんは、ずっと探るような目をわたしに向けたままで、 「でも私も、その場に居れたらよかったのに」 と続けた。なにが、でも、なのか疑問に思いつつ、 「ごめんなさい。」 咄嗟にわたしは謝っていた。 「どして? ブッキーが謝るところじゃないわ」 「うん……ごめんなさい」 「だから、違うでしょう?」 また謝りそうになったわたしは口を閉じた。せつなちゃんも黙った。 わたしはずっと避けていたせつなちゃんの目を見た。一瞬、表情がかたくなったせつなちゃんは、下を向いて、 「いえ、ごめんなさい。私が変な質問したのがいけなかったのよ」 「変だなんて……」 気まずい。わたし、反応間違えたかな。 「……あ、私、用事を思い出したわ。ブッキーごめんなさい、私帰るわね。今日はありがとう。これの続き、今度また教えて頂戴? よろしくね」 下を向いたまま突然、一気に捲し立てたせつなちゃんは、それでも、ピンクの編み物は大事そうにカバンにしまって、わたしと目を合わせずに帰ってしまった。 せつなちゃんはあんなに嘘が下手な子だったかしら。なんて、わたしも言えないよね。ずるい。ところでせつなちゃん、わたしがブッキーって呼ばれることは気にしてくれないんだね。わたし、ちょっと寂しいな。 「ねえみきたん」 「へ?」 カオルちゃんのお店で、ラブとブッキーを待っている時、試しに呼んでみた。すると、美希は変な声を漏らし、目を丸くして私を見た。その後、目を細めて睨みながら、 「せつなぁ~? さては、ラブの入れ知恵ねぇ~? まったく」 そう言って苦笑した。私は美希の向かいの席についていて、向かい合っていた。 やっぱり違う反応をするのね。これは出来レースだった。 「そんなことないわ。でも私も、みきたんって呼んでもいい?」 「ええ? そうね……。いいわよ?」 目を逸らしてそう言った美希の迷いが、私にはよくわかった。 私は嫌な顔をしていないだろうか。 「美希、ごめんなさい」 「え、ナニ?」 美希は訝しそうに私を睨んでいる。少し怒気も感じられる。悪ふざけが過ぎたかもしれない。 「冗談なの。美希、ごめんなさい」 「そう。せつな、貴方……。いえ、いいわ。許してあげる」 そして、会話は途切れた。 一緒にいるときに会話がなくても、苦に感じるような関係ではない。けれど、自分の撒いた種が、美希を、不幸にしてしまった。しあわせのプリキュアが聞いて呆れる。本当に嫌な子だ……。 みきたん、突然せつなにそう呼ばれた時のアタシ、完璧からは程遠かったわね。ハトが豆鉄砲を食らうってのがぴったりだったわよ。 ラブの入れ知恵、だったらすごいわね。効果覿面だったわよ。 でもそれだと、まだラブがいない今言ったのが腑に落ちないわね。ラブが面白がりたいなら、タイミングは今じゃなかったはず。 それなら、アタシをせつなが、からかっただけか。 でも、それだと、せつなのこの落ち込み方は異常だわ。しかも泣きそうになってるし。 ああもう、なんなのよ。アタシがせつなを泣かせたわけ? 泣きたいのはこっちよ! これは、そう、ラブのせいよ。間違いないわ。ラブがせつなに何か言ったのよ。アタシはラブのとばっちりを受けただけなのよ。アタシはせつなの八つ当たりにあった。それだけ。 あれ、それだとアタシ、惨めじゃない? 泣きたくなってきたわ―― わたしは遠くから二人を見ていた。遠目にも明らかに空気が重くなっていた。 (せつなちゃん、美希ちゃんにも聞いちゃったのね……。 やっぱりわたし、ちゃんと答えておけば良かったかしら。でも、わたしは美希ちゃんじゃないし、勝手なことは言えなかったんだもの。言いたくなかったんだもの、わたしの口からなんて。 そうよ、二人を、いいえ、三人を振り回す、ラブちゃんが悪いのよ。こうしてわたしの足が止まっているのも、ラブちゃんのせいなの) その時、二人より更に向こうから、走ってくる人、ラブちゃんが見えた。 同時に動いた二人、いいえ、三人に助け舟を出したのも――わたし、信じてた―― 「せつなー! お待たせー!」 「ラブ!」 「あ、ブッキーもまだだったんだ。なら走んなくてもよかったかー」 「ラブったら、もう」 「ちょっと待ちなさい、ラブ。アタシもいるんですけど?」 「ん? どうかした~? ウソウソ! ごめんね、みきたん、冗談だってばぁ~」 「はぁ~、ラブのせいで、いえ、なんでもないわ」 「うん? あたしのせいで何? ナニ?」 「なんでもないったら!」 「ぶ~! なによ~? みきたんのケチー。あ、ブッキー!」 「ごめんね、遅くなって」 「あたしも今来たとこだよー」 「ラブはブッキーに感謝しなさいよ」 「なんでラブちゃんがわたしに?」 「さあね」 「もう~、みきたん~、ごめんってばぁ~」 「まったく、ラブったら」 「なに? せつな」 「なんでもないわ」 「も~なんなの? みきたんもせつなも、あたしに言いたい事でもあるわけ?」 「ねえラブちゃん、やっぱりそうなのよね?」 「ブッキーも? なにが?」 「ううん? なんでもない」 「うわーん! みんながあたしをイジめるよー! カオルちゃんたすけてー!」 「新作、甘酸っぱいドーナツでも作ろうかね。あ、犬も食わないか」 少女たちの無邪気な笑顔をドーナツの輪から眺め、カオルちゃんも笑った。 一番わかりやすいのは、ラブちゃんだと思っていたの。でも今は違う。プリキュアになって、せつなちゃんと出会って、気付けば一番わかりにくくなっていた。 一番わかりやすいのは美希ちゃん。感情を隠すタイプでもないけれど、不器用よね。 せつなちゃんだって、直接的に感情を表に出すことは無いけれど、わかる方だと思う。 わたしは、引っ込み思案だし、感情を表に出すことは少ないかな。わかりやすいのかもしれないけれど。自分ではわからない。 問題はラブちゃんだ。最近はどんどんわからなくなってきている。 昔から皆のために一所懸命で、自分は二の次みたいなところがあったけれど。ラブちゃんは、自分のことには特に鈍感で、結構なドジっ子のはずだった。 でも最近、皆の心情を一番理解しているかのような言動が多くなった気がするし、すごく驚かされたことも何度かあった。 ラブちゃんだけが、先に成長してしまったみたい。 以前は姉であることもあって、美希ちゃんが大人っぽく見えたものだったのにな。 ラブちゃんにわたしの知らない秘密でもあるのだろうか。 あ、もしや、大人の階段のぼっちゃった、とか。 でも、大輔君とは付き合ってないはずだし、付き合ってたらすぐ広まるはずよね。それにあの二人、ちょっとそれとは違うのよね。特にラブちゃんが。 じゃあ、相手は、せつなちゃんかな。一番近いし、強い絆も本物よ。どっちから行くのも十分ありえるわ。せつなちゃんの暴走って線もいいわね。でも、そうなったらわかりそうなものよね。特にせつなちゃんで。 それだと、いいえ、美希ちゃんは無いわ。わたし、絶対に気付くもの。わたしだけでなく皆気付くわ、きっとね。それぐらいわかりやすいと思うの、美希ちゃんは。それにヘタレの美希ちゃんから行くことはないし、ラブちゃんは影でこそこそしないはず。 そうだわ、ミユキさんの可能性もあるわ。憧れも紙一重よね。ミユキさんもラブちゃんのことお気に入りみたいだし。でもでも、ミユキさんもそこまでわかりにくい人でもないわ。 ラブちゃんの相手、もしかして、わたしのことが、好きとか。ああでもこれだと階段のぼってないわ。身に覚えが無いし。 ラブちゃんは誰が好きなのかしら、どれも十分ありえるわ。あ、まさか二股なんてことも。全部の道もありかしら。どれも捨てがたい選択肢よね。迷っちゃうわ。 あれ、なにを考えていたんだっけ。そうそう、ラブちゃんが読めないのよ。 (ブッキーの表情、今日はやけにころころ変わるわね。面白いわ) (ブッキーったら、途中から話に加わらないと思ったら、なにを百面相してるのかしら。でもなんだろ、触れない方が良いって、アタシの中で警報が鳴ってるわ) (ブッキー、またやってるよう……。はやくなんとかしないと) 最近、ブッキーがあたしを観察しているんだよね。 いわゆる見つめてるってあれじゃないんだよね。それはそれで困るんだけど、でもその方が嬉しいかも、なんて。 だって観察なんだもん。観察。ひどいよブッキー。あたしを何だと思っているの! うーん、せめてもっとさりげなく見てくれないかなあ。いや、それもなんか変なことになってくるよ。 試しに観察し返した日には、みきたんとせつなまで挙動不審になってしまったし。 まったく、どうしてくれようか。 いやあ、最初につっこみ入れておけば良かったのにな。もう今更な感じで、タイミング逃しちゃったままだよ。 やっぱり、直接聞くしかないかなあ。でも絶対ごまかすよね、ブッキー。 こうなったら脅しにかかろうか。ばらしますよ? とか、もらいますよ? とか。うばいますよ? もありかな。 でもブッキーもこわいんだよね。幼稚園の時に―― 「ちょい待ち! ピーチはん、それ以上はほんまに堪忍してや」 そうだね、知らない方がいいこともあるよね。 近頃どうも、せつながつっかかって来るのよね。 アタシ、何かしたかしら。からかわれた覚えはあっても、アタシからせつなに何かした覚えはないわよ。 ラブみたいに、面白がってるだけには思えないのよね。 そういえば、ラブをからかうことはあるけど、ブッキーをからかうことはないわね。ブッキーには遠慮してるだけか。それとも、あ、考えるだけで寒気が。 あれ、ラブもいるときは、アタシをからかうことは無いわね。ラブも一緒にからかってきたら、余計に立ちが悪いから、別にいいんだけどね。 なんだろう、何か意味があるように思えるんだけど。せつなはラブに話しかけることが多いから、それだけのことかしら。でもせつなは、ブッキーとも結構話してるし、アタシとだってタコ以来は。 アタシにつっかかってるところを、ラブに見せたくない、とか? あれ、アタシ、何を苛立っているのかしら。せつな? ラブ? ブッキー? それとも 「ミキ、ワラッテー」 アタシ、シフォンを抱きしめたままだったわね。ありがと、シフォン。アタシ駄目駄目だわ。 「ねえラブ?」 「なに? せつな」 寝る前の一時、私はよくラブとおしゃべりしている。今はラブの部屋。学校の話が一段落ついたところだった。 「私には、あだ名、つけてくれたりしないの?」 「せつなにあだ名ねえ~、愛称のことね」 「ええ」 本当に愛称が欲しいわけではない。けれど、興味が沸いた。 「う~ん、あ、せっちゃんがあるじゃん!」 「それは、ちょっと違うわ。お母さんとお父さんにそう呼ばれるのは嬉しいけれど」 二人の微笑が思い浮かび、じんわりとしあわせを感じた。 「やっぱり? じゃあー、せつなたん!」 「せつなたん……。なんだか言いにくいし、しっくりこないわね」 それと、一緒なのが、嫌。でもこれは言わないわ。 「う~ん、あ、せったん!」 「混ぜてきたわね。うまいこと言ってるようだけど、愛称って感じではないわ」 これは冗談なのだろう。流しておこう。 「むむむ、よし、ガッシー!」 「ブッキーはかわいく聞こえるけれど、ガッシーはそうでもないわ。どして?」 これも冗談よね? ラブ? 「どしてかな~? 他か~。おお、イースたん!」 「イースたん、か。そうね。文字だけ見ればいいかもしれないわ」 「ごめん」 「やめてよ。謝るとか。気を使ったりしないでね」 そう、私はイース、だった。私がイースだったことも、人を不幸にしたことも事実。 否定しない。否定してはいけない。私は教えられた。 それも背負い立って、今度はプリキュアとして、皆のしあわせを守ると決めた。 イースだったのは私。イースは死んだ。生まれ変わった私はキュアパッション、東せつな。 もちろん償いもある。でもそれだけじゃない。 私にやり直せばいいと、私がしあわせになってもいいと、言ってくれた。 私がしあわせになることも、しあわせだと言ってくれる人がいる。 しあわせになって欲しい人たちのために、私もしあわせにならなければ。 「うん……。ねえ、せつな」 「なあに? ラブ」 「せーーつなっ?」 「だからなに! ラブ?」 「せっつなー!」 「もう! ラァ~ブゥ~?」 貴方の笑顔が、私を笑顔にする。私の笑顔は、貴方を笑顔にするだろうか。 ラブのように、私は、笑えているのだろうか。 今はまだ、そんな自信はない。ずっと自信なんか持てないかもしれない。 でもね、ラブ。聞いて、ラブ。私はもう、迷わない。だから、 「ねえ、ラブ」 私、精一杯、頑張るわ。 Fin
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/128.html
彼女の髪は夜の色。顔を埋めるととても優しい匂いがする。 「ラブの髪はお日様みたいね。」 ラブの波打つ様な癖のある明るい色の髪を、せつなは愛し気に撫でる。 「ラブは太陽みたい。」 もう一度、せつなは言う。ラブはくすぐったそうに身をすくめ、 ぴったりと、どんな小さな隙間も無いくらいに肌を寄せる。 柔らかな少女の肌はひとつに蕩けあってしまわないのが不思議なくらいだ。 そして、溶け合えないもどかしさを埋めるように飽きること無くお互いを貪り合う。 「ねぇ、せつな…。名前…呼んでよ……。」 「…ラブ。」 「…もう一度…。」 「ラブ……?」 「もう一度……。」 「ラブ…。………もう、何なの?」 少し苦笑いしながらもせつなは何度も繰り返し呼んでくれる。 「…せつなの声、大好き。」 せつなの声は、少し低くて、柔らかい。その声で甘く名前を呼ばれると、 幸せで全身が蕩けそうになる。 「ねぇ、好きって言って…。」 「…好きよ。…ラブ。」 「ホントに…?」 「大好き。」 「えへへへ…。あたしも…」 大好き、大好き、大好き…。 ラブは少し身を起こし、せつなの唇をついばむ。 軽く、浅く、だんだん深く。 吐息までひとつになるように。 太陽が安らぐのは、たったひとつの闇の中。 また明日も周りを照らせるよう、太陽は自分だけの夜に包まれて眠りにつく。
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/19.html
ある日のお風呂 ラブ「せつな、あたしも入ってもいい?」 せつな「っっ!!まだいいって言ってないでしょ!」 ラブ「隠さなくてもいいじゃん。せつな結構オッパイおっきいんだね~」 せつな「ちょっ!触らな…あん…や…め…」 ラブ「あれ-何かせつなの先っぽとがってきたよ?固くてコリコリしてる」 せつな「…ふぁ…駄目…」 ラブ「せつな…すんごく可愛い。続きはあたしの部屋でしよっか」 筆力なくてすみません
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/299.html
翼をもがれた鳥 第11話――暗闇の中で―― 四つ葉町の森の丘陵、その上空に突如赤い閃光が迸る。 光は一瞬で収まり、そこから四つの人影が投げ出される。 数メートルの高度からの落下。加速も伴っており、衝突に近い形で地面に叩きつけられる。 「イタタ……ここはどこ? っていうか、なんであたし変身解けてるんだろう?」 「アタシもブッキーもよ。何が起こったというの?」 「多分、アカルンが何かしたんだと思う」 「……あの遠くに見えるのは、館ね」 占い館の地下で繰り広げられた、勝ち目の無い戦い。 危うく爆発に巻き込まれるところだった。絶体絶命の窮地を救った赤い光。 それは、イースをエスポワールシャワーから守った光と同質の力のように見えた。 祈里は懐を探る。しかし、入れていたはずのアカルンの姿は無かった。 転移と同時にプリキュアの変身は解除され、イースだけが戦闘形態のまま残された。 イースは現状よりも館の様子が気になるのか、険しい表情で見つめる。 ほどなく館は、それが蜃気楼であったかのように消失した。 「消えちゃったね、せつな。壊れてなくなったの?」 「……違うわ、あれは隠蔽モードを起動させたのよ。ゲージと館の破壊は失敗よ」 「まあ、みんな無事なんだし、ひとまず結果オーライよね」 「良かったね。でも、アカルンはどこに行ったのかな?」 「オーライですって! もう同じ手段で潜入はできないのよ!」 美希と祈里の安堵の声に、イースが喰ってかかる。激しい憤りと悔しさをあらわにする。 ムッとする美希と、びっくりして目を丸くする祈里。 すかさずラブが割って入る。イースもすぐに謝った。 二人に当たるのは筋違いだと気が付く。失敗したのは自分なのだから。 「とにかく今日は帰ろう。全員が無事だったことだけは、喜んでいいと思うんだ」 「そうね、帰りましょう」 「うん、本当に良かった」 「――そうね」 「待って! どこに行くの、せつな。一緒に帰ろう」 「帰る? 私が……どこに?」 「おかあさんが言ってたの。せつなが元気になったら家に連れて来たらいいって」 背を向けて立ち去ろうとしていたイースが振り返る。 一瞬驚いた表情をして、やがて静かに首を振った。繋がれたラブの手をそっと振りほどく。 「私はあなたたちと一緒には行けないわ。この手で、壊してきた街なのよ」 「だから――それは!」 「任務で潜入することならできる。でも、今さら好意にすがるなんて……許されるわけないわ」 「ラブが、どんな思いであなたを助けようとしたのかわかってるの?」 「行くところ、ないんでしょ? せつなさん……」 「わかってる……。よく、わかってるわ。でも、私は――幸せになってはいけないの」 イースはラブたちに向き合ったまま後ずさり、背中から落ちるように崖から飛び降りた。 高さは二十メートル以上、生身で追いかけられる地形ではない。 そのまま森の中に落ちて、姿も見失った。 ラブの、絶叫だけを残して―― 『翼をもがれた鳥――暗闇の中で――』 懸命に探したにもかかわらず、せつなの行方はわからなかった。 イースの姿のままだったから、怪我をしていないのは確かだった。それだけが救いだった。 ラブが家に帰ったのは、夜遅くになってからだった。 今日一日、色々なことがありすぎた。心の余裕がなくて、連絡を怠ったのが失敗だった。 家の中はちょっとした騒ぎだった。 仕事を終えて病院に向かったあゆみが見たものは、空っぽの病室と―― ゴミ箱の中に、散り散りに破り捨てられた手紙。 やっとの苦労で繋ぎ合わせて、更に驚愕する。それは――遺書にも似た内容だった。 すぐに警察に捜索願いを出す。仕事を早退してきた圭太郎と懸命に心当たりを回る。 絶望的な想いで一旦家に帰って来た。その直後のラブの帰宅だった。 「何があったのかは、どうしても話せないんだな?」 「ごめんなさい……。あたしは間違ったことはしていない。それしか言えないの」 「わかった。信じよう」 「おとうさんっ!」 真っ青な顔であゆみは圭太郎に詰め寄る。しかし、結局あゆみもラブに強く問い正すことはできなかった。 手紙に書かれた真剣な想い。命すら賭ける覚悟。それを――知っていたから。 「それで、せつなちゃんはどうしたの?」 「いなくなっちゃったの。どこに行ったのかわからないの。だから、探さないと!」 「もう遅い、僕が行ってこよう。ラブは食事を取って休みなさい」 「ごはん……。せつなも食べてないのに食べられないよ! 行かなきゃ!」 「わたしが一緒に行くわ。おとうさんだけじゃ、せつなちゃんの顔がわからないし」 ラブに無理やり食事を取らせてから、もう一度三人で探しに出ることにした。 その捜索は深夜まで続いたが、結局見つけることはできなかった。 日の沈んだ、暗い森の中を少女は歩く。 その手には何も持たず。 その瞳には何も宿さず。 その足取りは、目的地すら持たず。 その心に、深い悲しみと後悔を宿して。 やがて、森を抜ける。 視界一杯に広がる美しい草原。 木々に覆われ、一筋の光も差さなかった夜空。 今は満天の星々の輝きと、緩やかな月の光に照らされて。 足元には一面のクローバーの花が咲き乱れる。 暗く深い森にも出口はあって、その先には優しい風景が広がっている。 ほんの少しだけ救われた気がして、その日はそこで一夜を明かすことにした。 一輪の花を摘み取った。 クローバー。シロツメクサの白い花。花言葉は―― “幸せ” 私が奪ってきたもの。 私が望んできたもの。 私には届かないもの。 私には、求める資格のないもの。 ありもしないペンダントを求めて胸に手をあてる。 クローバーの草のベッドに倒れこむ。瞳に熱いものが浮かび、星空が歪む。 せつなは両手で顔を隠すようにして眠りに付いた。 眩しい朝の日差しを浴びて、せつなは目を覚ました。 夢を――見た。 ラビリンスにいた頃の夢だった。 同じ服装の人々。感情を宿さず、自らの意思を持たず。ただ、与えられた役目を黙々とこなす。 まるで、ラビリンスという国家を形作る部品であるかのように。 その中に自分も居る。いや――かつて、居た。 次々に新しい部品が作られ、役に立たなくなった部品は廃棄される。 寿命と、人口の管理の名の下に。 それは嫌だった。それは寂しかった。それは悲しかった。 だから――特別な部品になろうとした。 優秀な道具としてでいいから――愛されたかった。 そんな願いも、望みも失われてしまった。いや、自らの手で断ち切った。 今の私は、壊れた部品。 どこにも適合することのない、壊れた部品。 「ねえ、せつな。せつなの幸せは何?」 どこからか、声が聞こえたような気がした。 「今からでも、きっとやりなおせるよ!」 声のする方に足を進める。その先に一筋の光が見えた。 それは煌くアクセサリー。四葉をモチーフにしたペンダント。 ラブからもらった幸せの素に、自らの手でチェーンを付けたもの。 そっと持ち上げる。手のひらに乗せる。 触れたとたんに、粉々に砕けて、風に飛ばされて散っていく。 わかっていた。夢の中なのに、こうなることはわかっていた。 一欠片も残らなかった。やっぱり――私の手には何も残らなかった。 「行ってみよう……」 昨日の朝に病室を出て、丸一日何も食べていないことになる。 お腹は空いていたが、以前のように体が痛むわけではない。 (このくらい、どうということはない) ポケットを探る。お金は持っていなかった。 入っているのは、一組のトランプだけ。 わかっている。何も無いのはわかっている。 でも、昨日とは違う。一つだけ違う。 今の私には、目的地があるのだから。 せつなは、しっかりとした足取りで歩き出した。 四ツ葉町を発って半日ほど過ぎた。遠くに目指す建物が見えてくる。 そこは壊れたドーム。自分が壊したドームだった。 初めて正体を明かし、ラブと向かい合った場所だった。 大切にしていた幸せの素を、自らの手で砕いた場所だった。 建物はバリケードで覆われ、立ち入り禁止の看板が高々と掲げられていた。 瓦礫撤去の工事が巨大な重機で進められる。 まだ、それは入り口の方だけ。中は手を付けられていないようだった。 せつなは、作業員やガードマンの目に付かないように侵入を開始した。 バリケードを飛び越えて、姿勢を低くしたまま駆け抜ける。 ドームの観客席に出る。惨状と呼ぶに相応しい徹底的な破壊の爪痕。 どれくらいの人々が、コンサートを楽しみにしていたのだろう。 誰と一緒に来て、どんな夢を描いていたんだろう。 ラブも、楽しみにしていた。 していたのに……私の看病を優先して、病室でテレビを見ていた。 そんなラブの夢を砕いたんだ……。コンサート会場ごと――私が!! せつなは唇を噛みながら走り出した。 目的の場所は――もう、すぐそこだったから! 「この辺りだったはず……」 椅子の下、通路の隅、目を凝らして必死に探す。 風に飛ばされてしまったのか、チェーンすら見つけることができない。 何をやっているのだろうと思う。 仮に見つかったところで、元の形に直るわけじゃないのに。 壊れてしまったものが、元の姿に戻るはずなんてないのに。 戻ったところで、それで私の罪が許されるわけではないのに。 それでも、見つけたかった。何か、名残でもいいから手にしたかった。 何も――無いのは寂しかった。 そして、視界の先に緑色に煌く欠片を捉える。 「あった……。あった、あったんだ……」 そっと、手のひらに乗せてみる。 割れた破片の一つ。かろうじてハートの形をとどめていた。 今度は、砕けて消えることはなかった。それを両手で大切に握りしめた。 まるで――懺悔するように。 何かに――祈りでも捧げるように。 せつなが再び四ツ葉町に帰って来た頃には、もう夜もふけていた。 都合がいいと思った。まだ、見ておきたいものがあったから。 これで二日が過ぎた。髪も、服装も、自信が無かった。 もう、昼間に街を歩けば人目に付くかもしれない。 記憶を辿り、一つ一つ廻っていく。 自分が壊した街並みを。破壊の痕跡を。 ジュースの水流で壊した喫茶店。結婚式場にテレビ局。いくつかのダンス会場。 中には完全に修理されていたものもあった。 壊れたままでも、営業を開始していた店もあった。 修理の目処がつかないまま、放置されている建物もあった。 ズキン ズキン ズキン ズキン ズキン ズキン ズキン ズキン 心が痛い。胸が苦しい。喚き声をあげて、逃げ出したいような気持ちに駆られる。 それでも、ちゃんと見ておきたかった。それが、今の自分にできるたった一つのことだったから。 そして、足がクローバータウンストリートの大通りに伸びる。 そこの一角に、赤と白の看板が並ぶ。(通行禁止)(危険・立ち入り禁止)横に迂回路が設けられる。 ラブが、とても大切にしている場所だった。 ラブと、初めて街で出会った場所だった。 ラブと、最後に戦った場所だった。 強力な炎によって溶かされたアスファルト。怪力でなぎ払われたお店の数々。 半壊のまま放置されているお店。下手くそな応急処置で、なんとか営業を再開しようとしているお店。 閉店と売却の張り紙が張られているお店もあった。 大きな建物ではないだけに、決して豊かな人たちのお店ではないだけに、よけいに悲しかった。 せつなの瞳に、とめどなく涙が溢れては流れ落ちる。 そして、座り込んで号泣した。 少し離れたところにある、公園のブランコに腰をかける。 時刻はそろそろ日付が変わる頃。怪しむような人通りもなかった。 そこも、ラブに案内してもらったところ。ラブが小さい頃に遊んだ場所。 蒸し暑い夜だった。ベトついた汗で、下着がへばりついて気持ち悪かった。 少しでも風が欲しくなって、ブランコを動かす。その時、ゾワッとせつなの背筋に悪寒が走る。 せつなの戦士としての本能が、迫る危険を察知したのだった。 「童心にでも帰ってるのかい? もっとも、僕達にそんな経験なんてあるはずもないが」 「サウラー……。決着を付けに来たというわけ?」 「そういう指令は確かに出ている。寿命の尽きた君が歩き回るのは好ましくないが……」 「はっきり言ったらどうなの?」 「もうわかったはずだ。この世界に君の居場所は無い」 サウラーは、ゆっくりせつなとの距離を縮めながら話しかける。 意思の力だけで、寿命管理の支配を解き放った。これは脅威であると同時に、評価の対象でもあると。 拘束を受け入れ、自らの意思でラビリンスに戻るならば、寿命も延ばしてもらえるかもしれないと。 「断ると言ったら?」 「ここで僕と戦うことになるね。今の君の体の状態で、勝ち目があると思うかい?」 サウラーが更に詰め寄る。同じだけせつなは下がる。頭の中では必死に計算を働かせていた。 ここで捕まれば、また占い館に入ることができるだろう。しかし、前回とは状況が違う。 当然、警戒されているだろう。拘束されて、変身もできないだろう。 本国に送られれば、洗脳されて、ラブの敵に仕立て上げられるかもしれない。 メリット無しと判断して、戦う決意を固める。その時だった。更に二つの気配が近づいてきた。 「せつなちゃん!」 「君がせつなちゃんか? そこの男! その子から離れるんだ!!」 「あなたたちは?」 「ラブの父親と母親よ。話は後で、早く逃げなさい!」 姿を見れば、相手がラビリンスの幹部であることはわかるはずだった。 それなのに、駆けつけてきた男の人はサウラーにしがみつく。 ラブの母親を名乗った女の人は、せつなをかばうように前に出て立ち塞がった。 敵うはずなんて――ないのに。 「ダメよっ! 早く逃げて! 人間に太刀打ちできる相手じゃないわ!」 「あなたこそ逃げなさい! 時間だけでも稼ぐから、早くっ!」 「とても不愉快だよ。命令でなければ誰がこんな仕事するものか」 「ぐあっ!」 サウラーは軽々と男の手を引き剥がす。そして、ゴミでも捨てるかのように無造作に投げた。 男の人はそのまま気を失う。そして次の障害物である、女の人に歩み寄る。 「おとうさんっ!」 「どきたまえ、無力の者をいたぶる趣味はない」 「誰が――どくものですか!」 「ならば、悪く思わないでほしい」 「きゃあ!」 サウラーは女の人の肩に手を添えて、軽く横に払った。彼にしてみれば限界まで加減したつもりだった。 しかし、それだけで地面に叩きつけられて気を失う。 「しっかり……しっかりしてください!」 自分が庇われている。その状況が理解できなかった。それで反応が遅れてしまった。 なぜ? 何のためにこの人たちはこんなことをしているの? 生まれて初めて、ラブ以外の人から向けられた純粋な好意。優しさ。思いやり。愛情だった。 女の人の額から、一筋の血が流れ落ちる。 ――ゾクリ。 せつなの背筋から、脳に向かって何かが駆け上る。 それは悲しさ。それは悔しさ。それは怒り。 それらが一つに結びつき、全身を焦がす激しい感情となる。 それは――憎悪。 よくも――よくも! よくも――よくも――よくも! よくも――よくも――よくも――よくも! 倒れた二人の男女の姿が、砕け散った幸せの素と重なる。 せつなの中で、破壊された街並みと重なって映る。 これが、幸せを奪うということ。 これが、私が今までやってきたこと。 これが、彼らがこの先も続けていくこと。 許せない!――絶対に――許さない!! 私には、何もないなんて嘘だ! 私には、戦うための力がある! “スイッチ・オーバー” 立ち上がり、手を合わせて――開く! 全身に電流が駆け巡る。体内の細胞が、戦うための配列に切り替わる。 黒髪は白銀の輝きを宿し、夜空に浮かぶ月のような純白の衣に覆われる。 運命を自らの意思で切り開いた証。イースが手にした新しき力。大空を翔ける自由なる翼。 その力が、今、弱き者を守るために揮われる。 赤い瞳が憎悪に燃える。それはサウラーに対する怒りだけではない。 過去の自分に対して! 助けてあげられなかった。今の、自分に対して! そして、幸せを奪う理不尽な暴力。管理国家ラビリンスの、存在そのものに対して!! 「疲れた体に、冷静さを失った頭か。やめたまえ、そんな状態で僕に、グボッ!」 「その不愉快な口を、永遠に黙らせてあげるわ!」 飛翔を思わせるような、超高速の踏み込みから放った拳がサウラーの腹部に突き刺さる。 間髪入れずに放つ回し蹴りが頭部を襲う。サウラーはかろうじてガードして後退する。 しかし、その背後にはイースが廻り込んでいた。 上下左右から、拳が、膝が、蹴りが、逃げ場など与えないと言わんばかりに牙をむく。 「バカ……な。この前よりも強くなっているだと!」 「心が生み出す力。あなたたちには決して理解できない力よ!」 イースが更に追撃を加えようとする。そして、サウラーがナケワメーケを呼び出そうとしていた時だった。 ラブがせつなの名を呼びながら駆け寄ってきた。その手にはリンクルンが握られている。 「ここは引いた方が良さそうだね。この借りは必ず返させてもらうよ」 「クッ、待て!」 イースは一瞬サウラーを追いかけようとして、踏みとどまった。 今は、傷付いた二人の介抱が先だと思ったからだ。 簡単にラブに事情を話す。ラブもまた、イースに経緯を伝えた。 ラブは時間が遅いため留守番していたが、連絡が途絶えたので見に来たらしい。 イースは変身を解除して、あゆみの介抱に当たる。 ラブは圭太郎を看た。すぐに目を覚まし、特に怪我はないようだった。 あゆみは頭に小さな傷を負っていた。濡らしたハンカチを額にかけたら気が付いた。 「おばさま、大丈夫ですか? 傷は痛みますか?」 「せつなちゃん! 怪我はない?」 「怪我をしてるのはおばさまです。でも、ありがとう」 「そう。良かった」 「僕は無事だ。もちろんラブもね」 「もう、おかあさん。心配したんだから!」 せつなは丁寧に圭太郎とあゆみにお礼を言ってから、背を向けて去ろうとする。 その手がしっかりとつかまれる。それも予想していたことだった。 払おうと振り返り――そのまま抱き寄せられた。 その手はラブではなく、あゆみだった。 「おばさま?」 「家にいらっしゃい、せつなちゃん」 「そうだ。行くところがないなら家に来るといい」 「せつな……お願い!」 理性が拒絶を命令する。 自分にはそんな資格はない。断るべきだと。 でも、温かかった。 抗えないほどに、心地良かった。 突き放すなんてできないほどに、嬉しかった。 「私は、幸せになっては、いけないような気がするんです」 「そんな子いないのよ。ひとつひとつ、やり直していけばいいの」 あゆみは、さらにせつなを抱きしめる腕に力を入れる。 決して離さない。そう主張しているかのように。 せつなの髪に顔をうずめるように、頭を寄せてくる。 汚れているはずなのに、そんなこと気にする風もなく、強く――強く―― 「はい」 せつなは、たった一言だけ、そう答えた。 そして、あゆみの腕の中で泣き崩れた。 その日から――桃園家に新しい家族が加わった。 第12話 翼をもがれた鳥――帰るべき場所――へ続く
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/274.html
コン コン 控え目にドアをノックする音に、しかし、ラブは目覚める。いや、半分、覚めていたようなものだから、 瞼を開けたという方が正しい。 「はい?」 一体、何だろう。目をこすりながら、鍵のかかっていないドアを開けると、そこには。 「ごめんね、ラブ」 パジャマ姿のせつなが、少し怯えた顔をして立っていた。その胸に、自分の枕をしっかりと抱きかかえる 姿に、まだ意識の半分が眠っているラブは首を傾げながらも、可愛いなぁ、と感じてしまう。 「ん、どうしたの、せつな?」 大きく欠伸をしながら問いかけると、せつなは黙ったまま、うるんだ瞳で彼女を見つめてきて。 「あの......ね」 眠れないの。恥ずかしそうに言うその声をかき消すのは、外から聞こえてくる雨と風の音。 その日、クローバータウンには、久しぶりの大型台風が訪れていた。 嵐の夜に 「ごめんね、ラブ」 「別にいいってば」 一つの布団に、二人は一緒になってくるまる。赤いカバーのかけられた枕に頭を乗せ、申し訳なさそうに 言うせつなの顔を薄暗闇の向こうに見ながら、ラブは苦笑する。 「しょうがないよ。誰にだって怖いものはあるもの」 「うん......」 恥ずかしそうに頷いて、彼女は口元まで布団を被る。その耳に聞こえてくるのは、地面に叩きつけられる雨と、 激しく渦巻く風の音。それが怖くて、せつなはラブの部屋に避難してきたのだ。 「けど、意外だな。せつなが台風が苦手だなんて」 「そう?」 「うん。だってほら、ハピネス・ハリケーンって台風みたいじゃない」 「ハリケーンは竜巻よ。台風はタイフーンだわ」 妙なところにムキになって反論するせつなだったが、一層強い風が窓を震わせると、ビクリと肩を震わせて。 そんな彼女に、ラブはよしよしとあやすように布団の上からその体を軽く叩く。 「大丈夫だよ、部屋の中にいれば、何もないって」 「うん......わかってるんだけどね」 いつもは、何があっても強がりを言う彼女とはとても思えない、弱々しく素直な声。吐く息が首をくすぐる程の 近くで覗き込むラブの瞳に、せつなは弱々しく笑って見せた。 「やっぱり、苦手なの。台風の音って」 「どして?」 少しおどけたように、彼女の口癖を真似るラブの肩を、もう、と言いながら彼女は軽く叩く。ごめんごめん、 真面目に聞くよ。そう笑う彼女に疑いの眼を向けつつ、せつなは胸の内の不安を吐き出す。 「ラビリンスには、台風なんて無かったからっていうのもあるけれど――――この、風と雨、嵐の感じが、すごく怖い」 確かに変よね、と彼女は苦笑した。吹き荒れよ、幸せの嵐。その言葉と共に必殺技を放つ彼女が、嵐を 苦手とするなんて。 だがしかし、怖いと思ってしまうものはしょうがない。 「こっちの世界に来てすぐの頃だったかな。前に、ひどい嵐が来たことがあったでしょう?」 「そういえば、そんなのもあったねぇ」 あれは春先のことだったか。季節外れ、という程ではないが、ひどい嵐が街を襲ったことを思い出す。それを 覚えていたのは、楽しみにしていた家族旅行が、それで中止になったからだ。 轟々と吹きすさぶ風と窓に叩きつける雨、それを部屋の中から恨めしそうに見つめながら、早く雨が止まないか、 何とか出かけられないかと願っていたものだった。 まだ、せつながこの家に来る前の話だ。 「あの時、私、まだ占いの館に来たばっかりでね」 「うん」 「あの建物、見た目は古いけれど意外にしっかりしてるの。けどやっぱり、あの嵐の時は、ひどく家がきしんでね」 ギィ。ギィ。初めて体験する嵐のすさまじさに加えて、音を立てて震える家に、その頃はまだイースと名乗って いたせつなは、慄いたものだった。 なんだ、この世界は。この、嵐というものは。全てが吹き飛ばされてしまうのではないか。 不安に胸を締め付けられながら、彼女は一人、館の自室から空を見上げていた。 「なんだかね、すごく、自然の大きさを感じたというか、自分がちっぽけに思えたというか」 「うんうん」 自分の中に理由を探すせつなに、ラブは小さく笑いながら頷く。その瞳は今、慈愛に満ちたものになっていて。 「とにかく、なんだか自分がとっても無力な存在に思えて......」 「せつな」 不安を隠すように喋り続ける彼女の体を、唐突にラブは抱きしめる。 ギュッと。強く。 「ラ、ラブ?」 「大丈夫だよ」 驚いて目を見開くせつなの背中を優しく撫でながら、その耳元でラブは囁く。 「アタシがいるって。せつなはもう、一人じゃない」 あ、と小さく彼女は息を飲む。そして、 「もう、ラブったら」 かなわない、と思う。自分の本当の気持ちを的確に見抜いて、一番の薬を与えてくれるのだから。 台風は、嵐は、確かに怖いと思う。 けれど今日、せつながラブの部屋を訪れた、本当の理由は。 あの時、館の中で一人、怖がっていた自分を思い出したせい。 ウエスターやサウラーには、頼ることなどとても出来なかった。だから、心細いのを必死に我慢した。夜は布団を頭まで被り、じっと嵐が過ぎ去るのを待っていた。 そんな風に、孤独だった頃を思い出して、せつなは耐え切れなくなったのだ。一人でいることが。 嵐だけなら、一人で我慢出来る。けれど孤独は。 「怖いの怖いの、飛んでいけ」 不意にラブが優しく口ずさみ、せつなの体を強く抱きしめた。 「なぁに、それ?」 「おまじないだよ。せつなを守ってくれる、ね」 体を離し、互いの顔を間近に見つめながら、少女達はこそぐったそうに笑い合う。その声は、タルトやシフォンを 起こさない程度に小さく、だがとても晴れやかなもので。 「ね、ラブ」 「なに、せつな」 「――――もう一度、ギュッて、して?」 頬を染め、照れ臭そうに目をそらしながら言うせつなの頭を、ラブはすぐに優しく、だが強く、胸に抱きしめる。 感じるぬくもりに、安らぎを覚えながら、彼女は思う。 私を守ってくれるのは、おまじないじゃない。貴方よ、ラブ。 やがて時を置かずして、聞こえてくる健やかな寝息、一つ。 「もう、寝ちゃった?」 小さな、小さな問いかけは、電気を消した部屋の暗闇の中に溶けていって。 そして寝息は、二つになった。 翌朝。 「わぁ......」 カーテンを開けたせつなは、一面の青空に思わず息を飲む。どこまでもどこまでも続く、青。 「ん......」 差し込む光に、目をこすりながら体を起こしてくるラブに、せつなはとびきりの笑顔を向けて言った。 「おはよう、ラブ」
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/51390.html
【検索用 らふ 登録タグ ATOLS VOCALOID ら 初音ミク 曲 曲ら】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:ATOLS 作曲:ATOLS 編曲:ATOLS 唄:初音ミク 曲紹介 ハッピー バレンタイン❤(*1) 曲名:『ラブ』 歌詞 ラブ ラララ ×12 ときめく旋律 甘く廻りだす 魔法の呪文唱えて ラブ ラララ ×24 ときめく旋律 甘く廻りだす 魔法の呪文唱えて ラブ ラララ ×24 ラ ラ ラ ラブ ラララ ラ ラ ラ コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/59.html
祈里「せつなちゃん、ちょっとイイ?」 せつな「ん?なぁにブッキー。」 せつな「!?って、何???え!?」 祈里「ダメ、静かに。ラブに声聞こえちゃうよ。」 せつな「ちょっと・・・。ダ、ダメだって、、、」 祈里「せつなちゃんのお尻って柔らかい♪」 せつな(///////////) 祈里「せつなちゃんてラブちゃんにゾッコンでしょ?」 せつな「え!?いや、その・・・。私を大切に・・・」 祈里「ラブちゃん羨ましいーなー。」 せつな「わかったか・・・、ら、お尻触ら・・・ないで・・・//////」 祈里「暇な時でイイから、、、たまには私も構って・・・欲しいな・・・」 せつな「ブッキー・・・泣いてるの?」 祈里「ごめん。こんな事して。でも私だってせつなちゃんの事・・・」 せつな「私、どうしていいかわからない。」 祈里「そーだよね。でもたまにでイイから、ほんと。じゃないとまた お尻触っちゃうんだから/////」
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/45.html
ラブ「最近ipodお気に入りだね♪」 せつな「え!?な、何で知ってるの???」 ラブ「この桃園ラブ様はなーんでもお見通しなのだぁ~♪」 ちょっと困惑気味のせつな。どことなく頬は薄ピンク色に染まり。 ラブ「で、何聞いてるの?」 興味心身、まるで子供のようにせつなを覗き込む。 せつな「・・・。ハッピーカムカム/// 」 と小声で呟くと、そっとipodを取り出してイヤホンをラブの耳へ。 ラブ「何か照れるなぁ///」 歌声はせつなの鼓動も届けてくれた訳であり。。。
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/392.html
「せつな、ドッジボールだよ!」 次は体育ということで着替え終わった私にラブは興奮気味に話しかけてきた。 「ラブったら、嬉しいの?」 「嫌なんだよ! だってせつなと違うチームになったら嫌だよ。 せつなに怪我をさせちゃうかもしれないのにボールを当てるなんて無理無理!」 「それは私もよ」 もし、そうなったらチーム分けをした先生、もしくはラブ以外全員を狙うわ。 「そうならないように祈りましょう? 私、信じてるわ」 「あはは。せつな、それブッキーの台詞だよ」 「よかったー。せつなと同じチームだよ」 本当によかったわ。これで先生やラブ以外全員を狙わなくて済んだわ。 「そうね。がんばりましょう。私も精一杯がんばるわ」 「大丈夫だよ。せつなと一緒なら、あたし完璧なんだから」 「ラブったら、それ美希の台詞よ」 でも、ラブと一緒なら何でもできる気がするわ。 「でも、向こうに男子のほとんどがいっちゃったよ・・・」 確かにあっちのチームには大輔君をはじめとしたクラスの男子のほとんどがいる。 明らかにこっちが不利だわ。何なのこのチーム分け。先生を当てようかしら・・・。 「ボールは桃園のチームからだ」 「ラブ、頑張って!」 「うん! まかせて。せつな」 ラブが始めに投げてゲームは始まる。大丈夫。外野はちゃんと注意して見ているからラブを狙わせたりはしない。 「いくよ!」 ラブはボールを持ち直して、そして・・・ 「大輔、覚悟ぉぉぉぉ-!!!」 「へ?」 急に半回転して思いっきり私たちの後ろ(相手の外野)の大輔君に投げつけた。 「ぐふぉ!?」 「「大輔ー!!」」 ボールはもろにお腹に当たって彼はその場に倒れた。そこにみんなが集まる。 「殺ったー!!」 それを確認したラブは「やったー」と叫んでから力尽きた彼を指差してこう言った。 「せつなのことを悪く言ったのは謝っても許さないんだから!」 ラブったら私のために・・・ 「これでまた一つ、幸せゲットだよ!」 「ラブ、彼は外野なんだから当てても相手の数に変化は・・・」 「先生、大輔のやつ気絶してます!」 相手チームの数が減った。まさかの外野が・・・ 「一人ぐらいハンデだ。続行」 先生が宣言し、ゲームが再開される。 だけどボールは相手の外野から。必然的に残りの二人の挟み撃ちにあう。 「きゃっ! 最低!」 「痛いじゃない!」 「うぶっ!?」 明らかに不利なチーム分け。一人。また一人と相手のボールに当たっていく。 「先生、大輔のやつにボールがあたってます!」 「あたるくらいハンデだ。続行」 避けている途中でラブが体勢を崩した。そこに相手のボールが飛んでくる。 まずい! あれじゃかわせない! そう判断した私は・・・いや、判断する暇もなかった。無意識に体は動いていた。 「ラブ、危ない!」 「へ?」 私はラブの前に飛び出した。 「くっ」 「ふぎゃ!?」 私は自分の体をつかってボールの軌道を逸らす。肩に当たったボールはそのまま倒れている・・・(誰だっけ?)・・・屍の顔に命中した。 「先生、大輔のやつ泡吹いてます!」 思い出した。大輔君だったわ。 私は思ったよりも強い衝撃を逃がしきれず、そのまま地面に倒れた。 「一旦中断!」 先生が中断する。 大輔君の時は続けたのに、どして? 「せつな! 大丈夫!?」 ラブが私に駆け寄る。私は起き上がりながら答えた。 「大丈夫よ。全然へい・・・痛っ!」 起き上がるときに足首に痛みを感じた。多分捻ったのね。 ラブは私を支えながら聞いてきた。 「せ、せつな。痛む?」 「少しね・・・」 「ごめんね。せつな。あたしなんかのせいで・・・」 「ううん。これでラブが傷付かなかったのなら安いものよ。ラブが怪我をしなかったから本当によかった」 「せつな・・・」 「何? ラブ」 「好きだよ」 「私も好き」 そして私たちは互いに目を瞑って顔を近づけて・・・ 「きゃー! 桃園さんと東さん大胆ー!」 「お前たち、授業中だぞ。いちゃつくならよそでやれ」 一気に離れた。 恥ずかしい。みんなの前で・・・ 「せ、先生! 保健室に連れて行っても良いですよね」 「何で既に決まってるんだ? まあ、いいや。連れて行ってやれ」 ラブはそれを聞いて顔が赤くなった。 「ラブ、どしたの?」 「せ、せつな。連れて行って犯れって言われたから、行こう?」 「ええ」 なんか、違和感を感じたけど・・・。 私はラブの肩に手をかけたら・・・ 「よっと」 「え?」 歩き出そうとした私の首と膝の裏に手を回して来たと思うと、気が付けば私は ラブに抱きかかえられていた。族に言う、お姫様抱っこ、の状態。 「ら、ラブ、みんな見てるし、重いから降ろして」 「大丈夫。それにけが人はおとなしくする」 そして、そのまま私はラブに抱かれたまま校舎に入った。 「先生、大輔のやつ白目剥いてます!」 「白目くらいハンデだ。再開」 ラブに抱かれたままの私は、ラブの首に両手を回して強く抱きついた。 「ど、どうしたの? せつな」 ラブは少しびっくりしたみたい。 「ラブにもっとくっつきたかっただけよ」 自分でも顔が赤くなるのが分かるくらい恥ずかしい言葉を言ったと思う。 「なんか、こうしてると・・・せつなはお姫様みたいだね」 あたり前よ。私はラブのお姫様なんだから。ラブだけのお姫様。 そしてラブは・・・ 「あれ? 誰もいない」 保健室についた私とラブはとりあえずベッドに座った。 「そういえば、今日は先生、休みって言ってたわ」 「あちゃー、授業終わるまで後30分はあるよ」 私は隣に座っているラブにもたれかかる。 「ねえ、ラブ? 私はお姫様?」 「うん。お姫様だよ」 そう言ってラブは私を抱きしめてくれる。 「違うわよ。ラブのお姫様よ」 「なら、あたしだけのお姫様だね」 ラブは強く抱きしめる。 「じゃあ、あたしは?」 私はその言葉に答えずに、ラブにより強く抱きつく。 「せ、せつな」 「大丈夫。鍵はかけたから」 そして私はラブに抱きついたままベッドに倒れこんだ。 ラブはね。私の・・・私だけ女神様なんだから。